2009年10月1日木曜日

観察会@泡瀬海岸

前回に引き続き小ネタ更新になってしまいますが…

9/19に沖縄市博物館主催で泡瀬海岸での観察会がありました。
そのお手伝いとして我々も参加させていただきました。

当日は…カメラを持って行くのを忘れてしまったため写真がありません。
(そのため小ネタの記事になっちゃいました)

ゲストは小学校3、4年の子供達です。
わんぱくな子はわんぱく盛り、
さらに人見知りが始まる子もいる年頃とあって
なかなか一筋縄では行きません。

なんでも学校でインフルエンザが流行してしまったため
参加者がかなり減ってしまい、
当日はゲストと僕らがだいたい同じ人数という事に。
それでも未熟な僕らはけっこう苦戦しました。

こういう時、普段あまり賢いとは言い難い(笑)学生にかぎって
まっ先に子供の輪の中に入ってかなり良い仕事してくれたりします。
このブログを読んでくだされば分かる通り、
僕などはどうしても理屈っぽくなってしまいます。

そう言えば僕もまだ小学生だった時に
神奈川県は城ヶ島で開催された磯の観察会に参加しました。
ちょうど僕らと同じ立場のお兄さんが、カニの種類
(イワガニとイソガニ)を間違えたのを目ざとく指摘したりして…
…いやぁ今思えば本当に嫌な感じのお子様でした(滝汗)
でも観察会で昔の自分のような子供に出会うとちょっと嬉しくなります。

写真が全くないのも何なので、
観察会の前日の下見で採れたカラッパの写真を。
後輩のカメラを借りて撮りました。
(SONY cyber shot + クローズアップレンズ)

カラッパの仲間 Calappa sp.

種まで分かりませんでした。(ご存知の方、教えて下さいm(_ _;)m)
なんだかただの岩のように見えますが
中央に2つ飛び出ているのが眼で、手前側がハサミになります。

名前も形も奇妙ですが、れっきとしたカニの仲間です。
カラッパは「ヤシの実」という意味のインドネシア語に由来するそうです。


ひっくり返すとこんな感じです。
甲羅が足を覆うように発達しています。まさに鉄壁の防備?というわけです。

砂地に、半分orほとんど体をうずめて潜んでいます。
掘り起こされると、足を器用に使ってまた潜ります。

カラッパ類は片方のはさみの付け根(で示した場所)に
突起を持っていて、こちらのハサミを缶切りのように使うことで
巻貝の殻を割ることができます。

当然挟む力も強い…はずなんですが、
どうもカラッパ=臆病、
こんなコミカルな姿をしたカニが攻撃してくるわけがない…
という誤った先入観があったのでしょう。

手に乗せて遊んでいると…
っつぎゃぁあーー!!!!!
手のひらにやられました、四連発。

ハサミが大きい割に先が小さいので、
まるでニッパーでつねられたような感触?です。
外傷はちょと穴があいたくらいで済みましたが、
痛さではかなり上位のランクに入るんじゃないでしょうか。
もっとも、こんなに攻撃的だったのはこのオスの個体だけで、
他に2個体見つけた♀はどちらも臆病でおとなしかったです。
ぁあ痛かった(汗)

2009年9月17日木曜日

ロケットカエルアンコウ短報

知人がとても珍しい魚を撮影・採集したので
その画像をUPします。

その前に、まずカエルアンコウという魚について
簡単に解説しておきましょう。

カエルアンコウの仲間はアンコウ目に属します。
アンコウ…というと深海魚というイメージが強いですが、
カエルアンコウの仲間は浅海に多く生息しています。

基本的に泳ぎがヘタで、
海底に張り付いて餌が通るのを待っています。
頭の上にある疑似餌(エスカ)を使って
小魚をおびき寄せて捕食する種類もいます。

以前はカエルアンコウの仲間はすべて
「イザリウオ」という名前でしたが、
イザリという言葉に差別的な意味が含まれるため、
イザリウオの仲間全般が「カエルアンコウ」になりました。
(いざりという言葉は、古来刑罰などで四肢を切られた人が
這いずり回る様子=いざる から来ているそうです。)

前置きが長くなってしまいました。

ロケットカエルアンコウ Antennarius analis

カエルアンコウの仲間ですが、
日本から数記録目、沖縄で2例目という
極めつけの稀種です。


写真ではやや分かりにくいですが…
多くの魚では、鰓穴は頭部のすぐうしろに開いています。
口から入った水を鰓穴から出す事で呼吸します。
ところが、カエルアンコウの仲間はこの鰓穴が
筒状になって胸びれの下などに開いていて、
そこから水を噴出して進んだりします。

このロケットカエルアンコウは、
さらにその鰓穴が尾びれの付け根まで来ています。
おそらくそれが和名の由来なのでしょう。

今回は台風で海が荒れた後に、
水深6mほどの海底で見つかったそうです。
ヒレや口がぼろぼろですでに満身創痍…
という状態だったということです。

前回見つかった個体も、
嵐の後に浅い場所から見つかったようです。
これは推測ですが、
この魚は普段かなりの深場にひっそりと暮らしていて、
たまたま浅場まで打ち上がった個体が
稀に人間の眼にふれるのではないでしょうか?


それにしても、ロケット・カエル・アンコウって…
初めて耳にした方はずいぶんシュールな生き物を
連想されたのではないでしょうか?

090905-08Gesashi-3

泥とカニと滴る汗と-part3-

水が引くと水たまりがあちこちのヒルギの根元にできる

足の踏み場もままならない密林

三日目は朝からエコツーから多くの方が
手伝いに駆けつけてくださり、調査は大変楽でした。
(何度も言いますが、この方々は一種のボランティアであり
かたや僕らはがっつりバイトで呼ばれているわけで、
優先的に働くべきはもちろん僕らです…すみません)

この日も相変わらずマングローブ林の中で
同じ内容の調査を続けていたので、
その模様は割愛するとして、ここらでひとつ
アナジャコという生物について解説することにしましょう。


再びご登場

三日目の調査でもアナジャコはわんさか出ました。
どうやらマングローブの泥の中に、眼には見えないけど
よほど沢山のアナジャコが棲んでいるようです。

エビに似ていますが一般的なエビとは少し離れていて、
エビ類(コエビ下目)、カニ類(短尾下目)、ヤドカリ(揖斐下目)
とならんでアナジャコ下目というグループを作っています。

(ちなみに、クルマエビは実は「仲間はずれ」で、
これら4つのグループの生き物とはまったく別のグループに入っています。)

さて、調査の模様からも分かるとおり、
アナジャコはマングローブ林の泥の中に穴を掘って暮らしています。
大型の個体になると、巣穴の周りに泥を塔のように高く積み上げます。
この塔、優に子供の背丈くらいの大きさにはなります。
人呼んで「アナジャコ塚」と呼ばれるものです。

(この文を書いている途中に、
塚の写真を一枚も撮っていないことに気づきました…)


一説によると、満潮時この塚の上に取り残された虫などを
アナジャコが捕食するんだそうです。
でも実際に地上に出してみると、
とても虫なんか捕まえられそうにないくらい動きが鈍いです。


しかし、手のひらに置くと指と指の間に潜り込もうとします。
見かけによらずかなり力強さです。
試しに土の上に置いてみると…


(手間がかかってる割に分かりづらいのは内緒です)

こんなふうに(?)はさみ足をスコップのように使って
どんどん泥を掘っていき、あっという間に泥の中に隠れます、

本来は彼らの作る塚をいくつも崩したり、
塚の根元の水たまりからアナジャコポンプでひたすら
吸い出しをまくったりしてやっと出会える生き物なんですが、
今回は続けざまに何匹も出てきたり、
あまつさえその辺を無防備に歩いていたり
とにかくアナジャコをよく見ました。
五年分くらいは見たんじゃないかな…


今回はこんな個体も見かけました。
抱卵した個体です。
産卵期が近かったのでしょうか。

ヒルギ林の根元はぬかるんでいて、
ときどき特に泥深いところに踏み込んでしまうと
泥にはまって本当に動けなくなります。

では三日目はこのへんで

面白がって誰も救助しない








2009年9月14日月曜日

090905-08Gesashi-2

泥とカニと滴る汗と-part2-

初日の最初に調査した地点は、
なかなかに泥の深い場所でした
しかも林縁にあるため太陽光が降り注ぎ、暑いったらない。
調査はまず方形枠(塩ビ管で作った50cm×50cmの枠)を
地点内にランダムに置き、その枠内の地上、地中にいる
甲殻類と貝類をすべて捕獲する、という方法で進められます。


書くとカンタンなようですが、
枠が置かれた場所が石だらけ、木の根だらけだったりすると
掘るのに一苦労です。

また小さなカニなどを逃さないよう、
掘った土はザルで掬って洗い徹底的に探します。


開高健のエッセイ「オーパ!」にでてくる
南米のダイヤモンドの露天掘りを思い出し、
労働歌でも唄いたくなってきます。
“ガリンペイロ”だっけ…?

この定量調査がひとしきり終わると、
あとは定量調査で採れていない種類を片っ端から捕まえます。

最初の地点の定量調査中、
いきなりエビのようなサソリのような生き物が
足下からもぞもぞと這い出てきました。
オキナワアナジャコです


オキナワアナジャコ

前回大浦の調査では、みんなで掘りまくって
やっと2個体見つかっただけだったので、
いきなりテンションが上がります。


写真が分かりにくいですが、眼はかなり退化し、
ハサミも土を掘りやすいように変化して物を挟むことができません。


さらに穴の中で方向転換できるように尻尾の部分は細長い…
というとても奇妙な形をしています。

じつは今回の調査では、通常なかなか出会えないはずの
このアナジャコがやたらと大漁で、
後半になるとアナジャコが出てきても
誰も騒がなくなってしまいました。
人間、日頃から小さな幸せに甘んじている方がいいぞ
という訓でしょうか。(大げさ)


木道の手すりに置いて撮影…
初日だったので浮かれて撮りまくりました。


川の中の地点では、網を振るって川底を漁ったりもします。


魚の方は専門家がいたわけではないので、
種までは細かく特定できません。

カワアナゴ類の幼魚


カマス類の幼魚

水に浸かったヒルギの根には、
ヒルギハシリイワガニがたくさんとまっていました。

ヒルギハシリイワガニ Metopograpsus latifrons

死角になる部分に隠れようとするので、
手でこちら側に誘導して撮影

足先やハサミの紫色がなかなか美しいカニです。
常に干出した枝にとまっていて、
追っても水の中にはなかなか逃げ込もうとしません。

一日の作業が終わってへとへとになって宿泊所へと向かいます。
どんな所に泊まるのか聞かされていなかったので、
公民館の会議室あたりで雑魚寝かな…それも楽しいかも…
なんて思っていたのですが…

!?

外装を見たときは、こじんまりとして小洒落たホテルだな…
くらいに思っていましたが、部屋を覗いて絶句です。
小洒落てるなんてもんじゃありません。
高級感溢れるお部屋は全室オーシャンビュー。
後輩の子なんか、このお部屋に一人でご宿泊です。
おまけに東海岸ですから朝日の美しいこと…!
もうすっかりリゾート気分です。

あれっ、僕何しにきたんだっけ…?

続く





090905-08Gesashi-1

泥とカニと滴る汗と-part1-

沖縄本島北部東海岸の東村にある慶佐次(げさし)という場所の
マングローブ林の環境・生物調査を手伝ってきました。


沖縄のマングローブ林というと西表島が有名ですが、
沖縄本島にも規模では及ばないものの
いくつかマングローブ林があります。

慶佐次は、前回別の調査でお手伝いに行った大浦よりも
さらに北に位置しています。
このマングローブ林は天然記念物に指定されていて
普段は林内に立ち入ることすらできないので、
今回ここで網やスコップを使って生き物を捕えるというのは
それこそ滅多にないチャンスです。
しかも慶佐次のマングローブで学術的な生物調査が行われるのは
30年ぶりとあって、俄然興味がわきます。

調査の日程は全4日間。
内容はおおざっぱに言うとマングローブ環境のモニタリングと
甲殻類の種類相(どんな種類がいるか)の調査で、
僕たちの作業は主にマングローブ林内でひたすら甲殻類
(エビ・カニの仲間を捕獲するというものです。

9月に入ったとはいえ、沖縄は当日もかなりの暑さでした。


今回の調査はちょっと変わっています。
慶佐次ではカヌーでマングローブを流れる河川を
行き来するエコツアーが行われており、
関わっている数社のエコツーリズム業者さんが話し合って
普段慶佐次を利用している慶佐次の環境を
専門家を呼んで調査しようという事になったそうです。
エコツーの業者さんは沖縄に数多ありますが、
こんな試みを実行している所はほんとうに少数です。

僕らはバイトでその手伝いに呼ばれたわけですが、
当日来てみるとエコツーのガイドをやってらっしゃる方が
何人もボランティアで(汗)参加されていました。
皆さんガイドさんらしく陽気で常にハイテンションでしたが、
マングローブ生物に関しての知識と観察眼、
そしてなにより自分たちのフィールドである
マングローブに関してさらによく知りたいという
真摯な姿勢に常に頭が下がる思いでした。


慶佐次のマングローブ林内には一部木道が設けられており、
この木道からシオマネキ、トビハゼなどの
マングローブ林の生物を観察することができます。

※普段は降りられません

マングローブ林を踏み荒らすことなく楽に観察するための木道…
というの頭ではは分かっていたつもりでしたが、
この木道がいかに便利なものか、
つまり河から一歩分け入ったマングローブ林が
いかに人間を拒む環境であるかということを、
今回の調査では散々体にたたきこまれる事になりました
…が、その詳細については次の記事で。

ちなみに今回の調査で指揮を執られたF先生によると、
慶佐次のマングローブ林は「まだまだ断然楽な方」らしいです。
みなさんも何かの機会でマングローブに入られる時は、
くれぐれも安易な冒険心で無謀な突撃をしないように。

誤解のないように付け加えておきますが、
カヌーでのエコツアーの方はごく快適で楽しそうで、
調査中うらやましい限りでした。
あ、バランスの悪い人は沈(ちん)してずぶ濡れになります(笑)