2009年8月25日火曜日

090524Minatogawa

少し(3ヶ月?)前ですが、
沖縄島南部の港川に行ったときのことを。

初夏の大潮は一年のうちでも
もっともよく潮が引く日の一つで、
普段スキンダイビング、ダイビングでないと
見ることのできない世界があらわれます。


港川港は、外側の堤防の先に
陸続きではない防波堤(沖堤)を持っていて、
潮がよく引く日にはそこまで歩いて渡ることができます。

港内は水が淀んであまり綺麗とは言えず、
周辺も流れ込んでいる雄樋川の影響で
いつもなんとなく濁っています。

しかし当日リーフエッジの方まで歩いてみると、
びっくりするほど水が綺麗でした。

エッジに近づくにつれ、
様々なイシサンゴ、ソフトコーラルが見られます。


キクメイシ科のイシサンゴ


ミドリイシ属の一種 Acropora sp.
水中(水深5cmくらい)の写真

ミドリイシ属の一種 Acropora sp.
よく見る種なんですが名前分かりません…


と、このあたりの種は生息密度こそ低いものの、
わりと色々な海岸のリーフエッジで見られます。

しかぁし…


アオサンゴ Heliopora coerulea

これが干出して見られる海岸はそう多くないでしょう!
(単なる私の知識不足だったりして…)


干出した群体

やや専門的な話になりますが、
このアオサンゴ、硬い骨格を持っているのに
分類学的にはイシサンゴの仲間(上記の3種)とは
違うグループ(八放サンゴ亜綱)に属します。
簡単に言うと、体のつくりから見て
「イソギンチャクよりもイシサンゴからかけ離れた」
生物なんです。

一番目の写真を見ていただくと分かるように、
骨格の断面は鮮やかな青色です。
(僕が折った訳じゃありません!念のため…)


どことなく神秘的(思い込み?)な青と茶のコントラスト

石垣島の白保とか大浦湾には
このアオサンゴの貴重な大群体があって有名です。
そこまで大きな群体はありませんでしたが、
この港川沖でも相当な数の群体が確認できました。

またまたちょっと学問的な話にまりますが…

ミドリイシなどの種の多くは
(何割くらいか分かりません…)
幼生の時に海流に乗ってかなりの距離を
移動することができます。(分散といいます)

しかしこのアオサンゴは幼生の期間が短く、
しかも生まれてから比較的親のすぐ近くに
定着してしまいます。(分散能力が低い)

つまり、ある場所で絶えてしまった場合、
他の場所から自然に幼生が流れてきて
集団が復活…という芸当ができないんです。

このような傾向は八放サンゴ全般に言えますが、
アオサンゴは特に局所的にしか見られないため、
特に分散能力が低いのかもしれません。


ツツウミヅタ Clavuraria sp.

ソフトコーラルも八放サンゴの仲間です。
ツツウミヅタは大度などでもよく見られます。
形態にいくつか\バリエーションがあり、
分類学的に面白い生物かもしれません。

今回は話がやや専門的になってしまったので、
見て楽しい(?)写真で締めくくります。

ユビワサンゴヤドカリ Calcinus elegans

ラテン語のelegansは「優美な」といった意味。
和名のネーミングセンスもイケてます。
最初沖縄に来た時、図鑑でしか知らなかった
コレが生で見たくてたまりませんでした…
が、あっさり見られました(涙)
そしてほどなく普通種だと知りました(泪)

波当たりの強いところなら、
沖縄島のどこの海岸でも見ることができます。
かなり丈夫なので、飼育して楽しむのも。
いいかげん見飽きてきた今でも、
この鮮やかなコバルトブルーを見かけると、
つい手に取って眺めてしまします。


クリイロサンゴヤドカリ Calcinus morgani

同定間違ってたらごめんなさい。
こちらは眼と眼柄(がんぺい)だけが青いヤドカリ。
多分、沖縄島の浅瀬で一番普通に見れる種でしょう。


河を越える不法入国者達


最後、一緒に釣りに行っていた後輩達は、
熱中しすぎて潮が満ちてくる時間になってしまい、
防波堤と沖堤の水路が河のごとく流れる中を
帰って来ました。
(ほんとは結構危ないです
真似しないでください 笑)

2009年8月20日木曜日

090627Maeda

どうもこのペースで凝った(つもりの)
記事を更新していくと
全然過去ログが片付かないようなので、
適当に簡単に記事にしちゃいます。

まず6月27日の真栄田岬でのシュノーケリングを…

沖縄は梅雨に差し掛かって、
雨が降らないまでもすっきりしない天気でした。
真栄田岬にしてはかなり透明度も低かったです。
エントリーポイントから洞窟までは、
シュノーケリング客でかなり賑わっていました。
記事を更新している8月中旬現在は
こんなもんじゃ済まないでしょうが…

前置きはこのくらいにして

クマノミ

沖縄の海ではお馴染みです

クマノミの2本のバンドはかなりの「純白」なんですが、
水中で撮るとご覧のように青くなってしまいます。
海中では太陽光のうち青の波長の成分が
他の成分に比べて透過しやすいためなのですが、
海中では「周りも全て青っぽい世界」のため、
魚などの色彩は割と普通に見えます(5mくらいまで)。

しかし撮った写真を陸上でPCのモニター等で見ると
本来の色彩とはほど遠い色に見えてしまいます。
そのため被写体が本来の色に見えるよう
(この場合クマノミのバンドが白く見えるように)
色調補正をするのですが、
3mを超えてくると補正しきれず、
無理にやると背景がとんでもない色になってしまいます。


不敵な面のハマクマノミ

だいぶふてぶてしい顔ですが、これはまだ中型の個体。
20cmに近くなってくると、もっと貫禄が出ます。


クロシオマメスナギンチャク Zoanthus kuroshio
口盤(ピンクの部分)の直径1cmほど

研究室のボスが記載した種。
スナギンチャク目という耳慣れない分類群の生き物です。
サンゴやイソギンチャクに近縁です。

ポリプの拡大写真
沖縄で潜っている方に見せても
「なにコレ??」と言われることが結構あります。
特に真栄田岬は多いですが、
結構どこで潜っても見られる生き物です。
いると思って見ないので
気づかないだけなのかも知れません。

マンジュウヒトデ Culcita novaeguineae

全身が球状という変わったヒトデです。
球状とはいっても、よく見ると
五角形をめいっぱい膨らませたような形をしています。
下から見ると、ちゃんと放射状に五本の線
(歩帯という)が入っています。

色彩にはいろいろなバリエーションがありますが、
どれも非常に落ち着いた味わいのある色彩をしています。

クローズアップ
和風の中にどこかエキゾティックを感じさせる…


ゴンズイ Plotosus lineatus

この日見たものの目玉はこれに尽きるでしょう。
ゴンズイの幼魚の群れ=ゴンズイ玉。
そんなに珍しいわけではありませんが…
何といっても可愛い。



にょろっととした体型…
口ひげの生えた半開きの口…
新しいマスコットキャラにならないでしょうか?
…無理?

ただし、背鰭と胸鰭の棘条(ヒレの硬いトゲ)に
毒を持っていて、
刺されると激しく痛むので注意しましょう!


2009年8月6日木曜日

特集1ーソフトコーラル

基本的にこのブログは学問的にも趣味的にも、
あまりマニアックにならないように
書いていこうと思っています。

ですが、記事を長ったらしくしないためにも、
記事中に出てくる生き物の名前や用語を
解説するためのリンク用記事を足していこうと思っています。

今回はその第一弾。

「ソフトコーラル」
という生き物をご存知でしょうか?
ダイビングをやってらっしゃる方には
それなりに馴染みのある生き物かもしれません。
あるいは、
マリンアクアリウムをやっている方の多くはご存知でしょう。

学問的には、
「ソフトコーラル」というのは分類群の名前ではなく、
「八放(はっぽう)サンゴ亜綱」というグループに属する
生き物のうちの体が柔らかいもの、を指す言葉です。

刺胞動物の系統関係

クラゲの仲間の耳慣れないグループについては
あんまり気にしないで下さい。(僕もよくわかりません)
要するに、
“サンゴやイソギンチャクの兄弟分にあたる生き物”
と理解していただけたらOKです。

これでも難しい…という方は、
とりあえず体の柔らかいサンゴみたいなもの、
と思っておいて下さい。

ソフトコーラルの仲間は沖縄だけでなく、
熱帯から極地にいたるまで
ほとんど世界中の海に生息しています。

北谷町砂辺(すなべ)海岸の海底

「八放サンゴ」という名のとおり、
この仲間の生き物はの触手を持っています。
「ポリプ」という小さなイソギンチャクのようなものが
たくさん集まって「群体」と呼ばれる集合体を作っています。
骨格こそ持っていませんが、
ソフトコーラルの生活は造礁サンゴ類とあまり変わりません。
岩や死んだサンゴの骨格の上などにくっついて生育します。

プランクトンなどの餌をとるもの、
造礁サンゴのように藻類と共生していて
その光合成の栄養をもらっているもの、
あるいはその両方からエネルギーを得ているものがいます。

あまり話が専門的になってしまっても何なので、
いろいろなソフトコーラルを画像で紹介します。

ウミキノコの仲間



カタトサカの仲間


ウミヅタの仲間

ウネタケの仲間

ムラサキハナヅタの仲間

その他 不詳

また、ソフトコーラルと間違えられやすい生き物に、
同じように’群体をつくるスナギンチャク類、
ポリプが大きく長いイシサンゴ類があります。

キクマメスナギンチャク Zoanthus sansibaricus


ハナガササンゴの仲間 Goniopora sp.

触った感じが柔らかく、なんとなく雰囲気も似てますが、
これらは基本的に触手が8本以上あるので
(よかったら数えてみてください)
よく見ると簡単に区別することができます。

さて、このソフトコーラルですが
実は分類が非っ常に難しく、
いまだに世界中に何種いて
どんな特徴で種類を区別するのか…?
というような基本的なことがいまだに大部分ナゾです。

このグループの分類に果敢に挑んだ研究者は
決して少なくないのですが、
近年発達してきた分子遺伝学的解析
(遺伝子の塩基配列を比べる方法)によって、
これまでの形態による分類がどこまで信用できるか
かなり怪しくなってきています。

それだけに、これから多くの新種の記載が
期待されるグループでもあります。

さて、
こんな柔らかくて目立ちやすい生き物、
すぐに魚に喰われちまうのでは…想像してしますますが、
彼らもちゃんと防御手段を持っています。
ソフトコーラルの仲間は、体内に骨片(こつへん、こっぺん)という
カルシウムの小片を体内にギッシリ持っています。
(本当にギッシリです。たぶん想像するより遥かにギッシリです)
ようするに、かじるとジャリジャリで美味しくないわけです。
(かじらないでください)


余談ですが、オニヒトデはソフトコーラルも食べるようです。
被害の報告はイシサンゴに比べて圧倒的に少ないですが、
写真のオニヒトデは胃袋を反転させて
ソフトコーラルを喰っていました。
周りに餌がなくてよほど空腹だったのかもしれません。

このように、
なかなかミステリアスな(?)面を持ったソフトコーラルですが、
残念ながら専門家からも、ダイバー、シュノーケラーからも
あまり注目されません。
図鑑もろくに出ていないので、
見たって種類が分からない…というのが
大きな原因の一つだとは思うのですが…

(日本語の詳しい図鑑はまだありません。
洋書ですが、"Soft Corals and Sea Fans"
という図鑑がオーストラリアで出版されています。)

海に潜る機会があったら、
この怪しくも美しい生物をじっくり観察してみて下さい。
(えっ…気持ち悪い??)

090804Manzamo

引き続きフレッシュなネタの更新を。
恩納村の(だったはず…?)
万座毛(まんざもう)で潜りました。

こういう説明的な画はなるべく省かねば…

万座毛は浅いリーフ(礁)が岸から20mくらい続いたあと、
一気に30mほどまで落ち込むポイント。
その “壁” に張り付いて移動していくと、
色々と面白い付着生物が見れます。
(まぁ一般的には、
回遊してくる大物なぞを見るのが王道なんでしょうが…)

イシサンゴの仲間

すみません、名前さっぱり分かりません。
イソギンチャクモドキ(ディスクコーラル)かな?
と思いましたが、骨格は持ってました。

サンゴの仲間には、海中の青い光に当たると
異なる波長の光をはね返す
いわゆる「蛍光」を示すものが数多くあります。
これが蛍光タンパクによる「色」だというところまでは
分かっているのですが、
なぜこんな色をしているのか…?
ということに関しては諸説あり、
ひとことで言うなれば「ナゾ」です。

紫外線から身を守るとか、
褐虫藻が利用しやすい波長の光に変換するとか、
最近では蛍光を持ってるのはたまたまで、
本当はこのタンパク質には全然別の役割があるんじゃないか…
などと言われています。
最後の説はちょっと投げやりっぽいし浪漫に欠けるなぁ…

ウンチクが長くなりました
どんどんいきましょう


ムラサキハナヅタ Briareum (Pachyclavularia) violacea

「スターポリプ」と言った方が通りがいいかも
岩などの上に、被覆状(マット状)に成長する
ソフトコーラルの仲間です。
灰褐色のものが多いですが、深場(5m〜)に行くと、
蛍光グリーンをしたものが多く見られます。

共肉(岩にへばりついている部分)は
もれなく深い紫色をしています。

属名が2つあるのは、要は「もめてる」って事です。
気になる方がいらっしゃれば個別に質問お願いします。


ツツウミヅタの仲間 Clavularia sp.

万座毛の壁にタペストリーのように咲いていました。
ちょっと薄暗い海中で思わず
「美しい…」と息を飲んでしまいました。
(そうでもないか…?)
ソフトコーラル好きの私としてはたまりません。

sp.はspecies(種)の略、「〜属の一種」という表現です。
ひらたく言えば、
「〜属の何かだろうけど、それ以上細かいことは分からん!」
という事です。

ちょっとソフトコーラルに深入りしてしまったので
人気者のウミウシいってみましょ


オハグロツバメガイChelidonura inornata
↑同定は友人情報による
写真がヘタなのはホント勘弁して下さい

後日ウミウシフェチの後輩に名前聞いておこうと思います。
なかなかシックでお洒落な色彩


ミガキブドウガイHaminoea cymbalum

名前も素敵なら貝殻も軟体部もカワイイ
(軟体部=貝の柔らかい部分)
貝殻を持っていますが、ウミウシの仲間です。
画像ではおしりを向いてます。

手に取って無理矢理撮影
ごめんよ…


アカホシサンゴガニ

太い枝を持ったサンゴ、
特にヘラジカハナヤサイサンゴの
枝の間に棲んでいます


サンゴに近づくとはさみを広げて
威嚇してきます。
棲み家のサンゴを守るため、
サンゴの外敵と戦ったりもします。

2ダイブ潜ったので疲れました…
細かい所の補足なんかはまた今度…

またまたボヤキですが、このブログ、写真の緑色が本当にうまく出ません。
植物の緑はいいんですが、それより青みがかった緑がくすみます。
iPhotoでリサイズしたときは綺麗なんですが、
投稿画像を見て「げっ…」と思うことが度々あります。
今回のミガキブドウガイは意地で何回も補正し直しました。
でも海中で見たらもっとずっと綺麗なんですよ〜