2009年8月6日木曜日

特集1ーソフトコーラル

基本的にこのブログは学問的にも趣味的にも、
あまりマニアックにならないように
書いていこうと思っています。

ですが、記事を長ったらしくしないためにも、
記事中に出てくる生き物の名前や用語を
解説するためのリンク用記事を足していこうと思っています。

今回はその第一弾。

「ソフトコーラル」
という生き物をご存知でしょうか?
ダイビングをやってらっしゃる方には
それなりに馴染みのある生き物かもしれません。
あるいは、
マリンアクアリウムをやっている方の多くはご存知でしょう。

学問的には、
「ソフトコーラル」というのは分類群の名前ではなく、
「八放(はっぽう)サンゴ亜綱」というグループに属する
生き物のうちの体が柔らかいもの、を指す言葉です。

刺胞動物の系統関係

クラゲの仲間の耳慣れないグループについては
あんまり気にしないで下さい。(僕もよくわかりません)
要するに、
“サンゴやイソギンチャクの兄弟分にあたる生き物”
と理解していただけたらOKです。

これでも難しい…という方は、
とりあえず体の柔らかいサンゴみたいなもの、
と思っておいて下さい。

ソフトコーラルの仲間は沖縄だけでなく、
熱帯から極地にいたるまで
ほとんど世界中の海に生息しています。

北谷町砂辺(すなべ)海岸の海底

「八放サンゴ」という名のとおり、
この仲間の生き物はの触手を持っています。
「ポリプ」という小さなイソギンチャクのようなものが
たくさん集まって「群体」と呼ばれる集合体を作っています。
骨格こそ持っていませんが、
ソフトコーラルの生活は造礁サンゴ類とあまり変わりません。
岩や死んだサンゴの骨格の上などにくっついて生育します。

プランクトンなどの餌をとるもの、
造礁サンゴのように藻類と共生していて
その光合成の栄養をもらっているもの、
あるいはその両方からエネルギーを得ているものがいます。

あまり話が専門的になってしまっても何なので、
いろいろなソフトコーラルを画像で紹介します。

ウミキノコの仲間



カタトサカの仲間


ウミヅタの仲間

ウネタケの仲間

ムラサキハナヅタの仲間

その他 不詳

また、ソフトコーラルと間違えられやすい生き物に、
同じように’群体をつくるスナギンチャク類、
ポリプが大きく長いイシサンゴ類があります。

キクマメスナギンチャク Zoanthus sansibaricus


ハナガササンゴの仲間 Goniopora sp.

触った感じが柔らかく、なんとなく雰囲気も似てますが、
これらは基本的に触手が8本以上あるので
(よかったら数えてみてください)
よく見ると簡単に区別することができます。

さて、このソフトコーラルですが
実は分類が非っ常に難しく、
いまだに世界中に何種いて
どんな特徴で種類を区別するのか…?
というような基本的なことがいまだに大部分ナゾです。

このグループの分類に果敢に挑んだ研究者は
決して少なくないのですが、
近年発達してきた分子遺伝学的解析
(遺伝子の塩基配列を比べる方法)によって、
これまでの形態による分類がどこまで信用できるか
かなり怪しくなってきています。

それだけに、これから多くの新種の記載が
期待されるグループでもあります。

さて、
こんな柔らかくて目立ちやすい生き物、
すぐに魚に喰われちまうのでは…想像してしますますが、
彼らもちゃんと防御手段を持っています。
ソフトコーラルの仲間は、体内に骨片(こつへん、こっぺん)という
カルシウムの小片を体内にギッシリ持っています。
(本当にギッシリです。たぶん想像するより遥かにギッシリです)
ようするに、かじるとジャリジャリで美味しくないわけです。
(かじらないでください)


余談ですが、オニヒトデはソフトコーラルも食べるようです。
被害の報告はイシサンゴに比べて圧倒的に少ないですが、
写真のオニヒトデは胃袋を反転させて
ソフトコーラルを喰っていました。
周りに餌がなくてよほど空腹だったのかもしれません。

このように、
なかなかミステリアスな(?)面を持ったソフトコーラルですが、
残念ながら専門家からも、ダイバー、シュノーケラーからも
あまり注目されません。
図鑑もろくに出ていないので、
見たって種類が分からない…というのが
大きな原因の一つだとは思うのですが…

(日本語の詳しい図鑑はまだありません。
洋書ですが、"Soft Corals and Sea Fans"
という図鑑がオーストラリアで出版されています。)

海に潜る機会があったら、
この怪しくも美しい生物をじっくり観察してみて下さい。
(えっ…気持ち悪い??)

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